もっと知りたい時計の話 Vol.70

さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史、時計が測る時間、この世界の時間などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。

今年も4月1日から4月7日まで、スイス・ジュネーブで、ロレックスやパテック フィリップなど世界の名門、老舗時計ブランドが新作を発表する世界最大の時計の祭典「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ・ジュネーブ2025」が開催されました。今回はこのフェアの話題をお届けします。

今年のこの時計フェアで、新作時計と共に来場者の間で話題になったのが世界最高峰の自動車レース「Formula1(フォーミュラワン)」です。日本では1980年代から2000年代にフジテレビのF1レース中継、なかでもアナウンサーの古舘伊知郎さんのドラマチックな実況中継をきっかけにF1ブームが起きたことは、当時子どもや若者だった40代以上の方々ならご記憶のことと思います。

当時は自動車メーカーのホンダがエンジンサプライヤーとして、またトヨタはチームとして参戦。さらにさまざまな日本企業がスポンサーとして参戦しました。中嶋悟(なかじま・さとる)さんをはじめ佐藤琢磨(さとう・たくま)さんなど日本人のF1レギュラードライバーの誕生も話題になりました。そして、ホンダがエンジンを供給したマクラーレン・ホンダチームは圧倒的な速さで“音速の貴公子”と呼ばれたアイルトン・セナと、緻密で計算されたレース戦略で“プロフェッサー(教授)”と呼ばれたアラン・プロストのトップドライバーのコンビで、1988年に全15戦のレース中、実に14戦で優勝するという偉業を成し遂げました。

ただその後、日本企業の撤退や日本人ドライバーの不在、2011年で地上波テレビ中継が終了したこともあり、日本国内でのF1ブームは終焉を迎えます。しかし、実は欧米をはじめ世界各国ではいま、F1がかつてないほど大ブームになっています。調査機関のニールセンによれば、昨年2024年にF1のファンは世界で推定8億2650万人。なかでも中国やカナダ、アルゼンチン、サウジアラビア、アメリカなどでは前年比12%以上も増えたとのこと。

この世界的な人気の盛り上がりを受けて今回、F1とのパートナーシップを強化。F1に関連する新作を数多く発表したのが、かつて日本のF1ブームで広告キャラクターを務めていたアイルトン・セナと共に、一躍時計ブランドとして有名になった「タグ・ホイヤー」です。十数年ぶりに「F1の公式計時担当ブランド」に復帰して、モータースポーツファンから再び注目を浴びています。


F1公式計時に復帰したことを知らせるタグ・ホイヤーのプレスリリースより

このコラム冒頭の写真のように、今回のウォッチズ・アンド・ワンダーズで同社は自社ブース前に1988年のチャンピオンカー「マクラーレン・ホンダMP4/4」。そして、現在同社がスポンサーとして支援し、2021年から2024年まで4年連続ドライバーズチャンピオンに君臨するマックス・フェルスタッペン選手がドライブする「オラクル レッドブル レーシング」のマシン「RB」。2台のF1マシンを展示。7日間の会期中、タグ・ホイヤーのブース前はスマートフォンでマシンを撮影したり、マシンを背景に記念写真を撮ったりする人たちでいつも賑わいました。

そして、この2台のF1マシンの後ろにあるブースとその巨大スクリーンでフューチャーされた今年の新作時計の中で、日本のF1ファンにとって見逃せないのが、1988年に発売され、当時のF1ブームの象徴のひとつだった時計「フォーミュラ1」のデザインを受け継ぐ「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」です。


タグ・ホイヤーの新作「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」。

電池式のクォーツモデルだった当時のモデルとは違い、わずかな光でも長時間動き続け、最低でも15年間は電池交換が不要という最新のソーラークォーツムーブメントを搭載しているので使いやすさも抜群。何よりも当時のモデルそのままの鮮やかなベゼルや文字盤、ストラップの色使いが懐かしくも新鮮。

この4月に三重県の鈴鹿サーキットで開催されたF1第3戦「日本グランプリ」からチャンピオンのマックス・フェルスタッペン選手と同じチャンピオンチームに移籍して同じF1マシンをドライブするF1参戦5年目、現在24歳の若手日本人ドライバー・角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手も、マックス・フェルスタッペン選手と同じ、タグ・ホイヤーのクロノグラフ「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ × オラクル レッドブル レーシング」を着用しています。


角田裕毅選手と着用モデル「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ × オラクル レッドブル レーシング」

日本人F1ドライバーが誕生したのは1970年代。そしてホンダのエンジンを積んだF1マシンは数多くの優勝を重ねて、1988年の「15戦14勝」など数々の伝説を打ち立てています。ただ残念ながら、まだ日本人のF1ドライバーによるF1グランプリの優勝は、まだ1度もありません。

しかし、角田選手の乗るレッドブルのF1マシンはトップクラスの性能を持ち、また角田選手もF1界のトップドライバーのひとりとして今や注目される存在です。今年は「日本人ドライバーによるF1グランプリ優勝」という長年の夢がついに実現するかもしれません。地上波のテレビ中継はありませんが、F1にご興味のある方はぜひご注目ください。