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もっと知りたい時計の話 Vol.99

さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史、時計が測る時間、この世界の時間などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。

太陽の強烈な光が世界に溢れる暑い夏がやって来ました。熱中症には十分注意が必要ですが、今回取り上げるのは、光をエネルギー源にして動く時計、ソーラーウォッチのお話です。光を受けて発電し、蓄えた電気で動き続けるこの時計は、電池交換の手間を減らしながら、日常で気軽に使える便利な仕組みを備えています。

機械式時計よりも格段に高い精度を低価格で実現したクォーツ式時計は、1970年代に一気に普及し、時計の世界に「クォーツ革命」という大きな変化をもたらしました。一方で、数年ごとに電池交換が必要なこと、そしてその電池が使い捨てタイプ(充電できない一次電池)であることは、当初から環境面の課題として指摘されていました。

そして、その解決策として登場したのが、文字盤に光が当たると発電するシリコンソーラーセル(シリコン太陽電池)を組み込んで、そのエネルギーを内蔵した二次電池(充電できる電池やコンデンサ)に貯めてクォーツ式ムーブメントを動かす「ソーラーウォッチ」です。

時計を腕に着けていたり、テーブルの上や窓際など「光のある場所」に置いていたりすれば、電池切れをあまり心配せずに使い続けられます。そのためソーラーウォッチは、使うときにほとんど手間がかからない「究極のメンテナンスフリーウォッチ」とも言われます。

光で発電する「太陽電池」は、19世紀から開発が続く古くて新しい技術です。最近では、各家庭への設置も期待される「ペロブスカイト」と呼ばれる次世代太陽電池が注目されていますが、ソーラーウォッチに使われる発電効率の高い「シリコン太陽電池」が開発されたのは1954年、アメリカのベル研究所でのことでした。その後、1972年に世界初のソーラークォーツ式腕時計として、アメリカの半導体メーカー、ラーゲンセミコンダクター社がLEDデジタル表示の「シンクロナー2100」を発売します。さらに1976年には、日本のシチズンから世界初のアナログ(針)表示式ソーラーウォッチ「クリストロン ソーラーセル」が登場しました。


左)ソーラーウォッチ(太陽電池時計)の仕組み【日本時計協会のHPより】右)世界初のアナログソーラーウォッチ「シチズン クリストロン ソーラーセル」(1976年発売)

当時は光の透過率を確保する技術がまだ十分ではなかったため、発電効率を優先して8枚の単結晶シリコンソーラーセルを文字盤の上にむき出しで配置した大胆なデザインが新鮮でした。これが、現在シチズンが展開する「光発電エコ・ドライブ」というソーラーウォッチの原点です。この時計は2019年、国立科学博物館の「未来技術遺産(重要科学技術史資料)」に登録され、同博物館に実物が展示されています。

その後、ソーラーウォッチの技術は進化を続けます。「クリストロン ソーラーセル」のフル充電状態での駆動時間は約1週間(約7日間)でした。しかし1980年代に入ると、ミニ電卓にも使われるアモルファス(非晶質)シリコン太陽電池が開発・採用されます。蛍光灯などの弱い室内光でも効率よく発電できるようになり、さらにムーブメントの基板も、ガラスから自由な加工がしやすいステンレス基板やフィルム基板へと進化しました。これによって、文字盤デザインの自由度も高まっていきます。

1990年代半ばになると、電子回路の省電力技術が一気に進化して、現在のようなフル充電で約6ヶ月間の駆動が可能になります。そしてソーラーウォッチの世界をリードするシチズンは1995年、ソーラーウォッチに「エコ・ドライブ」という統一名称を付けました。

これ以降もソーラーウォッチは進化を続けています。クローゼットの引き出しのような「光がまったく当たらない」場所にしまうと、内蔵センサーがそれを検知して自動的に針の動きを止め、電力の消費を抑えます。そして再び光の当たる場所に戻すと、センサーが光を検知し、針を動かして正しい時刻表示に復帰します。こうした省電力機能は、高級なソーラーウォッチの多くに搭載されています。


シチズン「エコ・ドライブ」50周年を記念して2026年秋に発売予定の「Eco-Drive PHOTON(エコ・ドライブ フォトン)とその構造図。スリットの入った2枚の金属版と構造色フィルムの下にソーラーセルがある。一度フル充電すれば365日動き続けるCal.E036を搭載

また、気圧計や深度計などのセンサー機能を備えたモデル、標準電波やGPS衛星電波を受信して時刻やカレンダーを自動修正するモデル、スマートフォンとBluetooth無線通信で接続して時刻修正やアラーム設定ができるモデルなど、ソーラーウォッチの進化は止まりません。最近では、1年間の時間の誤差が±1秒以内という超高精度モデルも登場しました。またスイスの時計ブランドでも、タグ・ホイヤーのようにソーラークォーツ式ムーブメントを採用したスポーツウォッチが増えています。

価格が機械式よりも手頃で精度も高く、電池交換の手間も少ないソーラーウォッチ。まだお持ちでない方は、日々の暮らしの中でその便利さをぜひ一度体験してみてはいかがでしょう。