もっと知りたい時計の話 Vol.96
さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史、時計が測る時間、この世界の時間などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。
みなさんは何歳で「アナログ(針式)時計で時刻が読める」ようになりましたか? 保育園や幼稚園のとき? それとも小学校? 今回は、保育園。幼稚園、そして小学校での「アナログ時計の読み方」や「時間に関するお勉強」の話です。
時間や時計に関する勉強は、小学校に入学する前、保育園や幼稚園でも、「時間当て」などの遊びというかたちで行われていることは、このMagazineの以前の記事、お休みの日、こどもと一緒に「時間ぴったりゲーム」はいかが?というタイトルでご紹介しました。
保育園、幼稚園の教育では、先生は子どもたちに「アナログ時計の読み方」をいきなり教えることはしません。幼稚園について文部科学省が定めた学習の指針「幼稚園教育指導要領」では、子どもたちにまず時間への興味と関心を、そして生活リズムを身体で感じてもらうことが目標になっています。
アナログ時計の「長い針が12のところに来たら、おもちゃをお片付けしようね」といった声かけや、帰りの会での「昨日、今日、明日の話」を通じて、まず時計という道具が生活の目安になっていることや、1日という時間の単位を子どもたちに肌で感じてもらうのです。
そして子どもたちが小学校に入学すると文部科学省が定める「小学校学習指導要領」に基づいて、「アナログ式時計の読み方」や「時間という概念」の勉強が、算数の授業の中で始まります。学年が上がるにつれ、子どもたちの時間感覚は「生理的な感覚」から「単位の理解(抽象概念)」へと拡大していきます。
小学1年生で子どもたちは、「アナログ時計の時刻の読み方」を習います。でも「○時47分」のような細かい読み方ではありません。まずは「長い針が12のときは、短い針の数字をそのまま読む」「長い針が6のときは『〜時半』になる」という、「何時」「何時半」という30分単位の読み方をまず教えます。

続いて小学2年生になると子どもたちは「分単位の時刻の読み方」を習います。さらに分、時間、日など、時間にはさまざま単位があることなども学びます。このとき、2年生が学ぶのは、
・「時刻」(点としての時間:例 10時15分)と「時間」(幅としての時間:例 15分間)の違い。
・「分」の読み方(1目盛りが1分、長い針が1周すると60分)。
・単位の換算:1時間が60分、1日が24時間であること。 ・午前と午後の意味。
どれも、大人にとっては「当たり前の簡単なこと」ですが、子どもにとっては、決して簡単ではありません。この2年生の「時間と時計の勉強」は、子どもたちが乗り越えなければならない「勉強の山」のひとつです。 なぜなら「1時間は60分」「1日は24時間」という、これまで勉強してきた10進法とは違う、60進法と24進法の「時間数え方」に初めて直面するからです。
またアナログ時計の「時刻の読み方」で難しいのが、先生方が“時間の罠”と呼んでいるもの。時計の短い針が2と3の間を指していて、長い針が8のとき、私たちは「時針がまだ3になっていないから2時だな」と判断します。でも、子どもたちの中には「え、これはなぜ?」「どうして?」と疑問を感じて、戸惑ってしまう子が居るのです。 特にデジタル表示しか知らない子どもたちが戸惑ってしまうのは、考えてみれば当たり前かもしれませんね。
さらに小学3年生になると、「分」よりも細かな時間の単位、「秒」が登場します。ストップウォッチなどを使って、1秒、10秒などの短い時間を感覚的に捉える学習も行われます。加えて「日常生活における時間の計算」、たとえば「9時50分に家を出て、30分歩くと何時何分に着くか」「10時30分から11時20分までは何分間か」という時間の計算も習います。
一方、外国の子どもたちの「時計や時間についての学び方」は、日本とちょっと違うようです。 たとえばアメリカの「学習指導要領」に当たる共通基礎学習基準では、「時計の読み方」を「分数の導入」として強く意識しています。アナログ時計の文字盤をピザのように4分割して、15分を「a quarter past」、30分を「half past」と教えることで、後の算数で学ぶ「4分の1」「2分の1」の視覚的イメージを養っておくのです。
でも、いま世界では「子どもたちがアナログ時計の時刻が読めない」という問題が起きています。何年か前、イギリスやアメリカのセカンダリー・スクール(中高生)の試験会場で、「アナログ時計だと残り時間が計算できない生徒が多すぎるため、デジタル時計に交換した」というニュースが大きな話題になりました。

この状況を受けて、教育の世界ではデジタル派とアナログ派の間で大論争が起きています。「スマートフォンやスマートウォッチが普及した現代、読めないアナログ時計を無理に教えるより、24時間制のデジタル表記や、タイムマネジメント(スケジュール管理)の実践に時間を割くべきだ、というのがデジタル派。一方、「アナログ時計の文字盤は、目に見えない時間を視覚化できる唯一のツール。時間を量として捉える力(時間感覚)は、数値だけのデジタル時計では育たない」というのがアナログ派。
あなたはデジタル派ですか? それともアナログ派ですか?